認知症の激しい症状はなぜ起こるのか

怒りやすくなる
認知症になると怒りやすくなります。その原因は、脳の一部である前頭葉と辺縁系の働きが正常でなくなっていることにあります。

前頭葉は衝動性や興奮を抑える役割を持ちます。前頭葉の働きが低下すると、ちょっとした怒りでも抑えることができなくなり、ほんの些細な事で怒ってしまうのです。

辺縁系は怒りを始めとした感情を司っており、辺縁系が通常よりも活発になりすぎた場合、ちょっとした苛立ちから怒りの感情が暴走してしまい、前頭葉で押さえ込めなくなってしまいます。




特集3-1
妄想による怒り
上記以外にも、認知症による被害妄想や、記憶障害から来る妄想が原因で、何かしらの被害にあったと勘違いして怒る場合もあります。

例えば認知症の人がお財布をなくしたとします。実際には誰も盗んでおらず、関与すらしていない場合でも、誰かに盗まれたのだと妄想してしまう可能性があります。
いわゆる物盗られ妄想というものです。

このような妄想では、親しい人間ほど犯人扱いされる可能性が高くなります。
認知症の場合、その人の中には舞台が存在し、登場人物である身近な人間しか犯人になり得ず、身近であればあるほど犯人役になりやすいからです。

ある日当然、「あなたが財布を盗んだんでしょ?」と迫られると驚いてしまうのも無理はありません。しかし、自分まで一緒になって怒ってしまってはいけません。
「信頼されてないから疑われた」、「嫌われているから疑われた」わけではないことを理解して、落ち着いた対応をすることが大切です。




周りの人たちの接し方も重要
周りの人たちの接し方が、認知症の人を追い込んでしまっていることもあります。

認知症になりゆく人は、症状に気付きつつも認知症になったことを素直に認められず、不安を抱えることがあります。
今までできていたことが、できなくなっていくのですから、不安になるのも当然です。
そんな時、周囲から「それは違う」「ここはこうするんでしょ」と「指摘」されると、認知症のご本人は「自分は叱られている」と受け止めてしまいます。




「励ましの指摘」であっても注意が必要
特集3-3
家族が実際に叱っているかどうかではない、というのがポイントです。
元気になってほしいという想いから、ついついご本人の間違いを訂正してしまうことはあると思います。
次は間違えないようにがんばろう、という励ましのつもりだったとしても、「指摘」であることに違いはありません。 ご本人は「励ましの指摘」を「叱られている」と受け取ってしまい、家族が励ませば励ますほどご本人は冷たくされていると感じてしまうのです。
「叱られている」と受け取り続けたご本人は次第に追い込まれていき、家族の中で自分が孤立しているのだと思うようになります。
追い込まれた結果、暴力や暴言といった行動を起こしてしまい、家族がそのことについて咎めることでさらに次の激しい症状に繋がる悪循環が生まれます。




下記の動画は、高橋幸男氏による事例の紹介です。
物忘れが頻繁に起こるようになったことへの不安と、妻から言われた言葉に耐えかねてつい手が出てしまい、罪悪感を感じて悩む男性の事例です。




拒否的なメッセージ
また、拒否的なメッセージとしてBPSDが現れている場合もあります。
身体的接触や声掛け、個人的な空間(居室)への侵入などは特に注意が必要です。
許可もなくいきなり身体に触られたら誰でも驚きますし、ノックもなく突然居室に人が入ってくれば嫌な思いをするのは当然です。
「認知症の人だからわからない」、などということはありません。
これらの行為をやめてほしいけれど、口で言っても聞き入れてもらえない、あるいは上手く言葉で伝えられない。その結果がBPSDです。
BPSDの全てが上記のような原因によるものとは限りません。しかし、接し方次第で防げるBPSDがあるのも事実です。
BPSDが発生すると、接する側も「指摘」や「拒否的なメッセージの原因となる接し方」を強めてしまいがちですが、そうすることでBPSDはさらに悪化してしまうため、自身の接し方について考えなおす必要があります。




特集3-2